歌舞伎D-13

tōshi kyōgen

通し狂言

とおしきょうげんa play performed in full, from first act to finale

INSTANT ANSWER一撃回答

一つの作品を序幕から大詰まで通して上演する形式。名場面だけを選んで並べる「見取り」と対をなす言葉である。

通し狂言は、一つの作品を序幕から大詰まで通して上演する形式をいう。対になるのが「見取り」で、こちらは複数の演目から評判の場面や舞踊を選び、取り合わせて一日の番組を組む上演方法である。

明治中期頃までの歌舞伎はおおむね通し上演だったが、その後は見取りが主流になったとされる。今日、通し狂言は物語の因果を初めから終わりまで味わえる上演としてかえって特別感を増し、初心者にも筋を追いやすい形式として親しまれている。

通し狂言の底力を物語るのが、『仮名手本忠臣蔵』の異名「芝居の独参湯」である。独参湯とは高麗人参を煎じた気付けの妙薬のこと。客の入りが振るわないときでも、この作品を通しで掛ければ興行は必ず息を吹き返す——江戸時代の書物にすでに記されたとされるこの言葉は、一つの物語を最初から最後まで見せることの力を、何よりも雄弁に伝えている。

十三代目市川團十郎白猿は、海老蔵時代から通し狂言『雷神不動北山櫻』を繰り返し手がけてきた。二代目市川團十郎(当時は海老蔵)が大坂で初演したとされるこの五幕の時代物は、『鳴神』『毛抜』『不動』の物語を含み、一人五役の早替りでも知られる。家に伝わる演目を一夜の大きな物語として見せる、市川宗家ならではの通し上演である。

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