01SYNOPSIS
3行あらすじ
筋を知ってから観ても、歌舞伎は損をしません。まずは三行だけ。
- 01
学問の神として名高い菅丞相(菅原道真)は、藤原時平の讒言によって大宰府へ流される。
- 02
丞相に仕えた三つ子の兄弟、梅王丸・松王丸・桜丸は、それぞれ別の主に仕えており、一つの家のうちに敵味方が分かれてしまう。
- 03
敵方に仕える松王丸は、寺子屋に隠れ住む丞相の遺児を救うため、我が子・小太郎を身代わりに差し出す。
02WHAT TO WATCH
初心者はここを観る
予備知識はこの三つで十分です。当日は、舞台に身をゆだねてください。
01
寺子屋の首実検
差し出された首を検めるのは松王丸自身。我が子の首を見ながら「相違ない」と言い切る——動かずに演じきる、時代物屈指の大役である。
02
三つ子という趣向
同じ顔の三人が、梅・松・桜の名を負い、別々の主のもとで生きる。義理と情の分かれ道を、一つの家の中に凝縮して見せる仕掛け。
03
義太夫狂言の呼吸
人形浄瑠璃から移された義太夫狂言。竹本の語りが心情を語り、役者はその流れに乗って動く。台詞と語りの受け渡しが聞きどころ。
03CHARACTERS
登場人物
- 松王丸
- 敵方に仕えながら、旧主への恩に報いる。我が子を犠牲にしてなお顔色を変えぬ、抑えの芝居の頂点。
- 菅丞相
- 菅原道真その人。人間離れした品格を求められ、演じる役者は舞台の外でも身を慎むとされる格の高い役。
- 千代
- 松王丸の妻。我が子を死地へ送り出し、その死を知って泣き崩れる。母としての情を一身に負う役。
04STAGECRAFT
見どころ・舞台
人形浄瑠璃として延享3年(1746)に大坂・竹本座で初演され、翌年歌舞伎に移されたとされる。二代目竹田出雲・三好松洛・並木千柳の合作で、『義経千本桜』『仮名手本忠臣蔵』とともに「三大名作」と呼ばれる。
全五段の長編で、今日は「車引」「賀の祝」「寺子屋」などが選ばれて上演される。「車引」の様式的な見得と、「寺子屋」の息を殺した心理劇——同じ作品の中に、荒々しい型と細やかな芝居が並んで生きている。